賃貸経営を行う上では、常にリスクが付きまといます。
中でも、多くの大家さんにとって特に気になるのが、空室リスクではないでしょうか。
当然ですが、空室の期間はその部屋からの家賃は1円も入ってきません。
空室期間が長くなるのは、大家さんにとって死活問題だと思います。
そこで今回は、お金のかからない空室対策からお金をかけて行う空室対策まで、幅広い空室対策についてまとめてみました。
ぜひ、あなたの賃貸経営にお役立てください。
賃貸経営最大のリスクである空室を解消する方法をご紹介していきます!
空室対策4つの種類
空室対策と一言で言っても、方法は色々とあります。
そこで今回は、主に4つのパートに分けて、それぞれご紹介していきます。
①募集条件の見直し
②入居条件の緩和
③リフォーム・設備の交換
④建物管理の見直し
それでは早速、一つずつ見ていきましょう!
①募集条件の見直し
まずは、募集条件の見直しについて紹介していきます。
募集条件の見直しとは、家賃や初期費用などの金額面を見直していく方法です。
メリットは、すぐに出来ることと、支出をしないで出来ることです。
逆に、デメリットは、収入が減ることと、物件の価値が下がる、入居者の質が下がることです。
まずは、募集条件の見直しについて具体例を見ていきましょう
Ⅰ.賃料の値下げ
まず最初に考えられる空室対策が賃料の値下げです。
そもそも周辺相場と比較してかけ離れて高い場合は、当然見直す必要があります。
ご存じの通り、築年数が経つほど家賃も安くなります。
「前の入居者はこの賃料だったから」と言って、ずっと同じ賃料では当然決まりません。
今出ている競合物件と比べて適正な家賃に見直しましょう。
Ⅱ.賃料設定の見せ方を変える
また賃料設定の工夫として、“見せ方”を変えるという方法もあります。
たとえば、家賃7万円で探しているお客様がいるとします。
その人がインターネットで検索をかける際は、賃料の項目を上限7万円までで入力します。
すると現在の募集賃料が7.2万円の物件はヒットしません。
そこで、募集賃料を7万円、管理費2千円という表示のさせ方をします。
こうすれば、インターネットの検索条件でもヒットすることになり、より多くの人に見てもらえることになります。
Ⅲ.初期費用を安くする
費用面での空室対策ですと、初期費用を安くするという方法もあります。
入居者によっては、月々の賃料を安くしてもらうよりも、初期費用が安くなる物件を好む方もいます。
そこで、今まで礼金1ヶ月で募集していたのをゼロにするだけで反応が良くなります。
決まらない期間が1ヶ月以上あるより、礼金をゼロにして早く決まった方がお得ですね。
あるいは、最近ではフリーレントを導入している物件というのもあります。
フリーレントとは、入居当初の家賃を何日間分か無料にしてあげるキャンペーンのことです。
現在の“借り手市場”の状況を考えると、今は礼金ゼロあるいは広告費を出すというのは、もはや当たり前かもしれません。
Ⅳ.AD(広告費)を出す
また賃貸仲介業者の営業モチベーションを上げるために、入居者を決めてもらった際の謝礼(AD:広告費)を出すというのも効果があります。
例えば、「広告費を1ヶ月分支払うので、お客様の紹介を頑張ってください」と、賃貸仲介会社へ営業を行うことで、他の物件よりも売上が上がる物件になるため、積極的にあなたの物件を紹介してくれるようになります。
【ポイント】決まりやすい家賃は”値ごろ感”のある設定!
上記の対策を行っても空室が埋まらない場合は、再度賃料の見直しを行いましょう。
一番入居者が決まりやすいのは“値ごろ感”のある物件です。
周りの競合物件の標準賃料よりもやや安くして、募集を出せば空室は埋まるでしょう。
②入居条件の緩和
続いて、空室対策の2つ目、入居条件の緩和について紹介していきます。
入居条件の緩和とは、今まで審査をNGとしていた人をOKにするという方法です。
メリットは、募集条件の見直しと同じで、すぐに出来て、お金がかからないことです。
逆に、デメリットは、入居者の質が下がる可能性があるということです。
それでは、入居条件の緩和について具体例を見ていきましょう。
Ⅰ.外国人や高齢者を受け入れる
入居条件の緩和は、入居者の間口を広げるということです。
つまり、今までNGとしていた外国人や高齢者の人を受け入れるようにするという方法です。
特に、大家さんの中には、外国人の入居を嫌う方も多くいらっしゃいます。
それは、生活習慣の違いによる部屋の使い方や近隣住民とのトラブル、あるいは家賃の滞納を気にしての対応ですが、実はこのようなトラブルはほとんどありません。
たしかに、日本での生活に慣れていなくて、日本語もあまり話せない人だとトラブルが起こる可能性もあります。
しかし、それは日本人に貸す場合でもリスクは同じです。
また、管理会社によっては基本的に日本語の出来ないお客様の入居はNGとしている所も多くありますし、そもそも日本の生活が長い外国人は日本人よりもしっかりしている方も多いです。
もし心配であれば、契約前などにしっかりと入居にあたってのルールを教えておくという対策を事前に打っておくことで、トラブルが起きる可能性を低くすることも出来ます。
もともと違う国で生活をしてきたわけですから、相手のことをまずは理解して、一緒に生活が出来るように教えてあげることが大事です。
今後、日本人の人口・世帯数は減っていきますが、日本に住む外国人の数はどんどん増加していきます。
現在の空室率の高さや部屋の決まりにくさを考えて、外国人の入居を受け入れるというのは空室対策にとって非常に有効な手段です。
費用をかけることなく、間口を広げるだけで空室を解消できるという意味でも、良い方法ではないでしょうか。
ただ「外国人だから」という理由で入居を断るのはやめて、個々に応じて受け入れるかどうかの判断をするようにしましょう。
Ⅱ.ペット可にする
また入居条件の緩和としては、ペットを飼育可にするという方法もあります。
現在ペットを飼える物件というのは限られているため、これをOKとするだけで空室は早く埋まるかもしれません。
しかし、ペットを可としてしまうと、音や臭いの問題などで他の入居者が嫌がる可能性もありますので、これには注意が必要です。
③リフォーム・設備の交換
続いて、空室対策の3つ目、リフォームやリノベーションなどの工事によって出来る空室対策について紹介していきます。
メリットは、家賃を下げることなく次の入居者を決めることが出来るということです。(あるいは、家賃の下落幅を抑えることが出来る)
リノベーションを行った場合は、家賃を上げて決めることも可能です。
逆に、デメリットは、やはり費用がかかるという点です。
リフォームを行う際のポイントは、ターゲットとする入居者の年齢や家族構成に合わせて、選ばれる部屋を作ることです。
それでは、リフォーム・設備の交換について具体例を見ていきましょう。
リフォームには大きく分けて下記の3種類があります。
Ⅰ.原状回復工事
前入居者が付けてしまった傷や汚れを元に戻すために行うリフォームです。
例えば、
・クロス、床の交換
・水漏れの修理
・ガスコンロの交換
などです。
前の入居者が短期入居だった場合、あるいは部屋をきれいに使用してもらえた場合は、この原状回復工事とクリーニングだけを行う場合が多いです。
一番費用をかけることなく、次の入居者さんを募集することが出来ます。
ただし、元の状態に戻すだけなので、設備が古いままだったり、周りの競合物件との比較から、原状回復工事のみで対応していると、少しずつ家賃を下げていかないと次の入居者は決まりません。
Ⅱ.内装リフォーム
原状回復するだけでなく、物件を魅力的にするために行うリフォームです。
空室対策としての内装リフォームは下記を指します。
例えば、
・エアコンや給湯器を新しく交換する
・キッチンを電気コンロからIHクッキングヒーターに変更する
・モニター付インターホンを新設する
・トイレを温水洗浄機付きにする
・お風呂を追い焚き機能付きにする
・畳からフローリングへ張り替える
・照明をデザイン性の高いシーリングライト(天井に取り付ける照明)に変更する
・クロスをアクセントクロスにする
といったものです。
必ず行わなければならないものではないですが、やり方によっては費用対効果の高いリフォームが可能です。
また手軽なところでは、
・照明スイッチのプレートをお洒落なものに交換する
・ちょっとした棚を付けたりする
といったことでも、内見者が受ける印象は変わります。
こうしたものはこの先もずっと使えるため、少しの投資で長期間にわたり効果を発揮します。
費用はただの原状回復だけの工事と比べると少し高くはなりますが、家賃の値下げ幅は少なく、やり方によっては今までと同程度の賃料を保つことが出来ます。
Ⅲ.大がかりなフルリフォーム・リノベーション
築年数が経ち、魅力が落ち込んでしまった物件に行うことが多いのが、大規模なフルリフォームやリノベーションです。
大幅に改装工事をすることで、物件としての価値をアップさせるのが目的です。
例えば、
・間取りを変更する
・3点ユニットバスからバストイレ別へ改装する
・設備をよりデザイン性の高いものに改良する
といったものです。
この工事には、かなりの費用が必要となりますが、次の入居者募集をする際に、家賃を維持・もしくは今までよりも高く設定することが出来ます。
たとえば鉄筋コンクリート造の耐用年数は約50年と言われていますが、半分の25年程度が経ったときに、フルリノベーション工事を行って、新たに物件を生まれ変わられるというのは非常に有効な手段です。
【ポイント】コスト意識を持つ
リフォームは、何も手を付けなければ、入居者を獲得することはできませんが、ただやみくもにお金をかければよいというものではありません。
その物件のニーズやターゲットに合わせたリフォームを行わなければ、効果も期待できないですし、何よりもコスト意識を持つことが重要です。
目の前のことだけに気を向けるのではなく、中長期的な観点から賃貸経営を行っていくようにしましょう。
④建物管理の見直し
最後に、空室対策の4つ目、建物管理の見直しによって出来る空室対策について紹介していきます。
メリットは、空室のお部屋だけでなく、すでに入居中のお客様からの満足度もアップすることです。
逆に、デメリットは、費用がかかることと、手間がかかるという点です。
建物の管理も内装工事と同じように、コスト意識を持って、中長期の視点を持って対処するようにしましょう。
それでは、建物の見直しについて具体例を見ていきましょう。
Ⅰ.定期清掃は必須!大規模修繕も計画的に!
「内見に行ったら、エントランスや共用部分が汚かった」、「共用部の照明が切れていた」、「粗大ゴミが放置されたままだった」。
内見者の第一印象が悪くては、せっかく実際に見に来て頂いても決まるわけがありません。
内見者を迎える前には、外構や共用部の掃除やメンテナンスを怠ってはいけません。
清掃業務は必ず毎月の定期的な巡回清掃を行うようにしましょう。
建物をきれいにしておかないと入居者満足度が下がり、現在の入居者の早期退去にもつながります。
定期的な清掃は、空室があるときだけでなく、満室になっているときにもしっかりと心掛けて行うようにしましょう。
また、清掃だけでなく、外壁・階段の塗装をするといった建物全体の工事を行うという方法もあります。
もしヒビ割れがある場合などは漏水の可能性も高くなりますので、今までメンテナンスを行ってこなかった物件は、すぐにでも検討すべきでしょう。
入居率アップには定期的な清掃や建物のメンテナンスは重要なポイントです。
Ⅱ.空室時のケア
建物管理は物件の周りだけでなく、「部屋に入ったら下水の匂いがした」などというのもマイナスになりますので、空室時の室内のケアも怠らないようにしましょう。
室内の照明が設置されていないのもマイナスです。
外が明るくない時間に内見があった場合は室内が見えづらいですし、全体の印象として暗かったという風に受け取られてしまいます。すぐに設置しましょう。
さらに出来れば、清潔なスリッパを用意し、匂いやほこり、虫がいないかなどのチェックを徹底しておくといいでしょう。
芳香剤を用意したり、POPで設備のアピールをする、「オーナーからの手紙」を用意する、花を飾ったりするのも、内見者の心をくすぐります。
Ⅲ.建物名称の変更
他に、建物全体の空室対策の一つとしては、物件の名称を変更するという手もあります。
もしそこに住むとなると入居者は住所を書くときに毎回、物件名を記入します。
そういったこともあり、やはりかっこ悪い名称より建物のイメージに合ったおしゃれな名称にすることで違った印象を与えることが出来るかもしれません。
その際、エントランスの看板も新しくするようにしましょう。
(ちょっとだけ・・)現在の賃貸市場について
ここまで、空室対策の具体的な方法を紹介してきましたが、最後にちょっとだけ、現在の賃貸市場についてご紹介させて頂きます。
ご存知の通り、現在の日本の賃貸市場は、大空室時代です。
日本の人口は減っていく一方、新築マンションは次々と建設されています。
そのため、 いわゆる”供給過多”となっており、 物件が余っている状況です。
空室率も年々厳しくなっている中で、大家さんとしては、空室対策の知識は必要不可欠です。
まとめ
いかがでしたか?
空室対策の基本は、(なるべく)経費をかけないで、その代わりに知恵やアイデアを絞りながら実施することが大切になります。
何か参考に出来るものがありましたら、ぜひ取り入れてみてください。
そして、空室対策はその物件のニーズやターゲットや大家さんの経済状況などによって、取るべき手段も変わってきます。
ベストなやり方と、やってもあまり意味のない方法がありますので、そういった空室対策について、アドバイスしてもらえる管理会社と付き合うようにしましょう。
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